500万円の工事を契約!建設業許可は必要?

建設

工事の種類は大きく2つ

工事を請け負う場合、種類は大きく2つあります。

工事の種類

軽微な工事

請負金額が500万円未満の建築一式以外の工事や、請負代金1500万円未満又は延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅(注)工事である建築一式工事は軽微な工事として、建設業許可が不要な工事とされています。

(注)住宅」とは、住宅・共同住宅・店舗等との併用住宅で、延べ面積の2分の1以上を居住の用に供するものをいうと考えられます。(建設業法解説63頁)

建設業許可が必要な工事
上記以外の工事は建設業許可が必要な工事となります。

軽微な工事とは請負代金500万円未満の建築一式工事以外の工事または請負代金1500万円未満の建築一式工事であることがわかると思います。ちなみに、建設業法第3条で軽微な工事がこのように定義されています。

建設業法第3条

建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、2以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。

一 建設業を営もうとする者であつて、次号に掲げる者以外のもの
二 建設業を営もうとする者であつて、その営業にあたつて、その者が発注者から直接請け負う1件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額(その工事に係る下請契約が2以上あるときは、下請代金の額の総額)が政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工しようとするもの

「ただし」で始まる文章で軽微な工事が定義されていますが、「政令で定める」の部分が明確ではありません。「政令で定める」とは建設業法施行令第1条の2第1項のことを示しています。

建設業法施行令第1条の2第1項

法第3条第1項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事1件の請負代金の額が500万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、1,500万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。

建設業法第3条・建設業法施行令第1条の2第1項を合わせて理解すると、先ほど解説した軽微な工事の定義に合致し、根拠となります。
また、「木造」の定義は、建設業法・建設業法施行令第1条の2第1項には示されていませんが、こちらの「建設産業・不動産業:建設業の許可とは – 国土交通省 (mlit.go.jp)」において説明されています。

軽微な工事の基準は?

では、500万円や1500万円とは具体的には何の額でしょうか?単純に”報酬”であると思った場合、これは誤りです。
この中に入る金額は消費税地方消費税はもちろんのこと、注文者が用意した材料の価格運送費が算入されることとなります。つまり

500万円>施工代金+消費税+地方消費税+材料費+運送費

であれば建設業許可が不要になるということです。この中には、元受けから貸与された建設用機械の金額は算入しません。
材料費がかからない場合、税抜き454万円程度の請負代金が許可の取得が不要な限度額となります。
また、請負代金を低く見積もるために契約を分割し500万円未満にした場合でも、それぞれの金額を合算した金額をもとに建設業許可の要否を判断することにになります。建設業法第1条の2第 2項に「請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする」と規定されているためです。

しかし、その契約の分割に正当な理由があるときは合算せずに判断することとなります。

加えて、さらにご留意いただきたいのは、建築一式以外の500万円の工事は建設業許可が必要であるという点です。建設業法では500万円未満の工事は軽微な工事とされているところ、「500万円以下」ではないため、請負代金が500万円の場合は軽微な工事にならないためです。

軽微な工事でも許可が必要なこともあります!

軽微な工事はいわゆる無許可業者でも行うことができます。しかし、あらゆる場合に常に軽微な工事については許可が不要であるわけではありません。どのようなことかと言うと、

”建設業許可事務ガイドライン要約”

軽微な建設工事のみ請け負う場合届出している営業所”以外”においては、ほかの営業所で既に許可を受けている業種については、営業することはできません。

仮に、本店では管工事・内装仕上げ工事を取得しており、支店A無許可で、支店B内装仕上げ工事を取得している場合に、支店Aにおいて500万円未満の内装仕上げ工事を行うことができません。また、支店Bにおいても500万円未満の管工事をすることはできません。それぞれ、ほかの営業所にて管工事・内装仕上げ工事の許可を取得しているため、その許可を取得していない営業所では工事を行うことができないのです。

また、建設業許可を受けている業者様のみについてのことではありますが、軽微な工事を請け負う場合についても主任技術者を配置する必要があることにご注意ください。(許可を取得していない業者様は不要です。)
これは建設業法大26条第1項に定められているため必要となります。

建設業法第二十六条第一項

建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。

主任技術者や監理技術者の設置が必要であるか否かの基準は下記の図の通りです。

中部地方整備局「建設業法に基づく適正な施工の確保に向けて」より

上記の図を端的にまとめると以下の通りとなります。上記の図は法改正前のものになります。改正後は4000万円が4500万円に、6000万円は7500万円になりました。

現場技術者の判断

元受け→許可を受けていない→配置不要
元受け→許可を受けている→4500万円以上の下請けを出す→監理技術者
元受け→許可を受けている→4500万円以上の下請けを出さない→主任技術者
※建築一式工事の場合、4500万円のところを7000万円とします。

下請け→許可を受けていない→配置不要
下請け→許可を受けている→主任技術者
※下請けの場合は4500万円以上の下請けを出すか否かの判断は不要

軽微な工事でも登録が必要な場合があります!

500万円未満の工事であっても、登録が必要な場合があります。これは、軽微な工事の場合は建設業許可が不要であるのとは別の理由で必要になります。

解体工事(解体工事業者登録)
電気工事(電気工事業者登録)
浄化槽工事(浄化槽工事業者登録)

解体工事を”建設業許可を持たずに”施工しようとする場合は、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」に基づく登録(解体工事業者登録)が必要です。この登録は、都道府県知事へ申請をして登録業者となる必要があります。

電気工事のを施工しようとする場合については、”建設業許可の有無にかかわらず電気工事業登録が必要です。この登録は都道府県知事・経済保安監督部長・経済産業大臣のいずれかによります。

経済産業省”電気工事業法の申請・届出等の手引き”より

浄化槽工事の施工をしようとする場合、建設業の許可を受けていない者又は土木工事業、建築工事業又は管工事業以外の許可しか受けていない場合、浄化槽工事業を営もうとする時は、浄化槽工事業の「登録」が必要です。
また、土木工事業、建築工事業又は管工事業の許可を受けている場合は、特例浄化槽工事業の「届出」が必要です。

建設業許可が必要な契約をした後に許可を取得しても遅い!

建設業許可を必要とする業者は、建設業法上、「許可を受けて建設業を営む者をいう」とされています。さらに詳しく、「建設業」の定義も建設業法に規定されています。建設業とは、「元受け、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業」です。「建設工事の完成を請け負う営業」は、契約をするタイミングを起算点とします。

つまり、軽微な工事の範囲を超える工事を請け負う契約をする時点で建設業許可が必要であるということになります。

無許可の場合に、軽微な工事を超える範囲の建設工事を請け負う契約をした時点で建設業法違反となるので注意が必要です。この場合、個人だと「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」法人だと、「1億円以下の罰金」と規定されています。また、元受けが無許可である下請けに500万円以上の工事を発注した場合、下請けだけではなく元受けも建設業法違反になるので、元受けの場合も下請けの許可の有無に気を付ける必要があります。
また、これにより「業務改善命令」や「営業停止処分」を受けける可能性があり、その場合処分後5年間は建設業許可を受けることができません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。建設業許可が必要な契約をする場合は細心の注意が必要です。そのような契約を予定がある場合は早めに許可を取得しておきましょう。

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弊社は、建設業許可に関する業務を行っております。建設業許可取得から、給与計算・社会保険に関する手続き、助成金の申請までワンストップで行うことができます。是非お気軽にご相談くださいませ。

    代表行政書士 

    中田NAKATA 丞哉SHOYA

    札幌市出身。日本大学法学部卒業。塾講師、大手行政書士事務所での勤務を経て事務所を開設。建設業許可申請業務をメインに、相続・遺言関係業務、契約書の作成業務を幅広い人脈でサポートする。