建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?
建設キャリアアップシステムとは、一言でいうと「技能者の資格や就業履歴などの経験を登録・蓄積し、技能や経験に応じた適正な処遇を受けることができる環境を整備する仕組み」です。
具体的には、建設キャリアアップシステムに技能者登録をするとカードを交付されます。そのカードを現場入場時にカードリーダーにかざして就業履歴を蓄積します。また、システムに直接保有資格などを登録することもできます。
このシステムを導入することで、若い世代の技能者たちがキャリアパスの見通しを持つことができ、より若い世代の確保に役立ちます。
建設キャリアアップシステムの登録の仕方には2通りあります。それぞれ、簡略型と詳細型です。この双方の登録事項は次の通りになっています。
簡略型 | 詳細型 |
---|---|
・本人情報 ・所属事業者情報 ・社会保険情報 | ・本人情報 ・所属事業者情報 ・社会保険情報 ・保有資格情報 |
簡略型と詳細型には登録事項だけではなく、登録料金も異なります。
簡略型は2500円 詳細型は4900円です。
また、建設キャリアアップシステムの登録申請は技能者本人が行うか、又は、所属事業者(元請事業者、上位下請事業者、能力評価実施団体を含む)が行うことになります。
建設キャリアアップシステム(CCUS)導入のメリット
先ほど紹介した通り、技能者の処遇改善ができるというメリットがありますが、ほかにもこの制度を導入することによって事業者にもメリットがあります。
経営事項審査での加点です。
建設キャリアアップシステムを導入すると、「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」の欄が、直近の事業年度すべてに公共工事の現場で導入していた場合は10点、民間工事を含め、全ての現場で導入していた場合は15点が加点されます。
また、技能者にとっても処遇改善以外のメリットがあります。CCUS応援団に加盟している事業者などで多くの特典を受けることができます。例えば飲食店では、生ビール一杯無料等のドリンクのサービスや、資格試験予備校TAC株式会社では特定の資格の講座費用の割引等、様々な特典を受けることができます。
このように、技術者・事業者ともに利益を受けることができるわけです。
とは言っても、建設キャリアアップシステムの登録方法によって享受できるメリットが異なります。先ほどご紹介した、「簡略型」と「詳細型」のお話です。経審での加点のメリットを受けることができるのは「詳細型」のみですのでご注意ください。以下に、「簡略型」と「詳細型」のメリットとデメリットをまとめてご紹介します。
簡略型のメリット | 簡略型のデメリット | 詳細型のメリット | 詳細型のデメリット |
---|---|---|---|
登録事項が少なく、簡便。 添付資料が少なくて済む。 | レベル判定を受けることができない。 詳細型に変更する際、別途2400円の費用がかかる。 | レベル判定ができるため、経審で出の加点が見込める。 | 登録料金が簡略型の2倍近い。 |
建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録はお早めに!
建設キャリアアップシステムは、一つの要素として経験年数を蓄積する機能があります。この経験年数の経歴証明について、現在経過措置が取られています。どのようなものかというと次の通りです。
建設技能者の能力評価制度における申請の手引きより
令和6年3月31日以前の建設キャリアアップシステム利用開始前の経験について、経過的な措置として、所属事業者等による経歴証明により確認された情報を活用することができます。
また、システム利用開始後は、経歴証明で証明される経験に、システムに蓄積された経験を加えて評価を申請することもできます。
上記のことをわかりやすく言うと次のようになります。
経験年数については、原則建設キャリアアップシステムに登録してから起算されますが、それではこのシステムに蓄積されていない、登録前の経験を評価できません。そのため、経過措置として、令和6年3月31日までの建設キャリアアップシステム登録前の経験については、所属事業所等がその技術者の経験年数について証明すると、その就業日数をレベル判定に利用することができるものとしました。この経過措置は令和11年3月31日までの取り扱いとなります。したがって、令和6年4月以降の建設キャリアアップシステム登録前の経験については、実際の経験が10年あろうと、所属事業所等の経歴証明によってレベル判定の際の経験としては使えなくなってしまいます。
そのため、建設キャリアアップシステムの登録は早めにしておいたほうが良いわけです。
※なお、経歴証明の起算点は、原則として建設業に関する資格の取得年月日等となっています。
建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル判定
建設キャリアアップシステムの技能者登録をすると、レベル1(初級技能者)のホワイトのカードが届きます。
しかし、知識、技能、経験などをお持ちで、中堅、職長、登録機関技能者にレベルを上げたい場合、レベル判定を申請する必要があります。レベル判定とは、建設技能者の能力評価制度のことです。そのレベル判定を通じて徐々にレベルが上がっていくことになります。レベル別のカードの色は以下の通りです。
レベル | カードの色 | 技能 |
---|---|---|
レベル1 | ホワイト | 初級技能者 |
レベル2 | ブルー | 中堅技能者 |
レベル3 | シルバー | 職長 |
レベル4 | ゴールド | 登録機関技能者等 |
このレベル判定の基準は国土交通省から出ており、以下の通りです。
・経験
→建設キャリアアップシステムに蓄積された就業日数
・知識・技能
→建設キャリアアップシステムに登録された保有資格
・マネジメント能力
→建設キャリアアップシステムに蓄積された職長・班長としての就業日数や登録基幹技能者講習などマネジメント能力を測る保有資格
上記の3点を見ていくということになります。レベル判定における能力評価基準は、全て画一的に定まっているものではなく、その種類ごと(全40種)にその要件が異なります。
例えば、電気工事では以下の通りとなります。
レベル1
要件 |
---|
建設キャリアアップシステムに技能者登録され、レベル2から4までの判定を受けていない技能者 |
レベル2
就業日数 | 保有資格 |
---|---|
3年 | 第一種電気工事士試験合格者 第二種電気工事士免状取得者 |
レベル3
就業日数 | 保有資格 | 職長・班長経験 |
---|---|---|
5年 | ・レベル2の基準の「保有資格」を満たすこと ・第一種電気工事士免状取得者 ※ただし、次の資格にあっては、指定する就業日数を満たすことにより、レベル3の保有資格を有するものと取り扱う。 第一種電気工事士試験合格者で認定電気工事従事者 7年以上 青年優秀施工者土地・建物産業局長顕彰者で第二種電気工事士免状取得者 7年以上 第二種電気工事士免状取得者で認定電気工事従事者 10年以上 | 職長または班長としての就業日数が1年 |
レベル4
就業日数 | 保有資格 | 職長経験 |
---|---|---|
10年 | ・レベル2、レベル3の基準の「保有資格」を満たすこと ・次の3つのうちいずれかに当てはまるもの 登録電気工事基幹技能者 優秀施工者国土交通大臣顕彰(建設マスター) 卓越した技能者(現代の名工) | 3年 |
このように、具体的な基準が示されています。ほかの種類についても具体的に示されているので、各種のレベル判定の詳しい審査基準はこちらを参考にしてください。
レベル判定申請の手続き
レベル要件をチェックしたら、申請費用を納付します。料金は技能者一人当たり 4000円です。この費用は申請前に納付することになります。
費用を納付したらレベル判定申請の手続きに入ります。レベル判定申請は、技能者ご本人ではなく、技能者が所属している事業所が代行して行います。
この建設キャリアアップシステムを運営している「建設振興基金」はレベル判定の審査をしていませんので、各評価団体に申請することになります。レベル判定申請先は国土交通省が出しているのでこちらをご覧ください。
この際、必要書類も提出することになります。提出方法は、メール・郵送等、団体が指定した方法によることになりますので、一度ご確認ください。また、どのような書類が必要かは団体によって異なりますのでご注意ください。
念のため代表的なものをお示ししておきます。
- 申請手数料の振込んだことを証明するもの(振込票控、受領証控、振込受付票の写し等)
- CCUS技能者カードの写し
- 各種同意書(個人情報利用に関するもの等)
- 技能者レベル判定申請書
- 経歴書
- 資格証
- 申請者情報一覧
レベル判定申請の流れについてもまとめてご紹介します。次のような手順になります。
①レベル要件を確認
②能力評価制度推進協議会に申請費用を納付する
③メールや郵送など、実施団体の定める方法で申請書類を提出する
④能力評価団体が能力評価審査を実施
⑤メールで評価結果の通知を受ける
⑥建設キャリアアップカードが送付送付される
※新しい建設キャリアアップカードが届くまで1か月程度かかります。
建設キャリアアップシステムに関することならGAKU!
当事務所は、建設キャリアアップシステムに関する業務をお取り扱いしております。
ご依頼をご検討の際、まずはお問合せフォーム、又は、お電話にてご連絡くださいませ。
代表行政書士
中田 丞哉
札幌市出身。日本大学法学部卒業。塾講師、大手行政書士事務所での勤務を経て事務所を開設。建設業許可申請業務をメインに、相続・遺言関係業務、契約書の作成業務を幅広い人脈でサポートする。