身近な人の最期、いつかは訪れてしまう
昔から関わりのある身近な人は、ずっとこのまま永遠に関わっていくだろうと直感的には思うことは自然です。しかし、筆者含め多くの方は自身よりも先に祖父母、ご両親を先に旅立ってしまいます。その時の悲しみや苦しみは計り知れないものです。
この記事ではそういった方のために、どのようにすれば克服できるか、言い換えれば「乗り越え方」を解説していきます。
筆者自身も大切な友人を無くし、とても落ち込んでしまった経験があります。かなり共に過ごす時間が長かったものですから、その喪失感たるや相当なものでした。こちらの記事で紹介するのは、身近な方を亡くし苦しんだ筆者が行った立ち直り方です。
悲しみはどのように作られるのか
身近な人との死別を経験をすると、故人を思い慕う気持ちが湧いて出てきます。また、その気持ちが自分の心を占有してしまい、暗い喪失感を感じるようになります。これは、しばしば喪失感と言われます。お分かりかと思いますがこれが悲しみの原点となります。
対して、その悲しみを現実的に対応し克服しようとする気持ちが湧いて出てくるようになります。
この、「暗い喪失感」と「それを克服しようとする気持ち」の狭間で揺れ動いているときに、とてつもない不快感を伴うことがあります。これを「Grif(グリーフ)」と言います。グリーフとは死別の悲嘆と呼ばれ、克服するのには長い年月を要することがあります。
そのグリーフの時期には「なぜこんなにも、望みもしないことになってしまったのだろう」や「死とは・・・」などという、答えのない問題について自問自答するということが多く見受けられます。
この時期に心や行動、体に現れる変化は数多く存在します。心に関する変化は以下のものが多く出現します。以下にご紹介する悲嘆反応(心、行動、身体に対する変化)の例は日本看護科学会誌J.Jpn. Acad. Nurs. Sci., Vol.25, No.3, pp. 83-91, 2005より引用しています。
気分不調:気分の低下と変調
物事に対し無気力・無関心になる
→何をしても面白くない、何もしたくない
面倒・億劫等
→食事を作りたくない、一歩も外に出たくない、人と会いたくない等
意欲・活力が低下する
→何ににも気力が出ない、世間参加がむなしいと感じる等
日常生活で気づく故人の不在性を感じる
→一緒に外食する人がいない、愛し・愛される人がいないと感じる
トラブルの発生
→親戚が怖い、身内がうっとおしい等と感じる
心の支えの消失
→心の要がなくなった、支えがいなくなった不安等を感じる
生きる意志
→生きて頑張らねばと感じたり、生き抜く覚悟をする
自責の念や罪悪感
→助けてあげられなかったと感じる
次に、行動に現れる変化で代表的なものはこちらです。
・ほかの人に故人の印象を聞く
・故人が築いた物事を確認する
・故人の写真を自分から遠ざける
・故人の衣類の整理を人に頼む
・飲酒量が増える
・薬に頼る
体に現れる反応は次のものが多く出現します。
・朦朧としている
・熟睡感があまりない
・何を食べてもおいしくない
・空腹のはずなのに空腹感がない
・いつも疲れている感じがする
・体に力が入らない
では、そのような感覚をどのように処理をしていくべきなのか、乗り越え方を次に解説していきます。
乗り越えるためには・・・
ここからは具体的な乗り越え方について解説していきたいと思います。
まず、身近な方の死を乗り越えるということは、悲しみを全く感じなくなるということではありません。「乗り越える」ということは身近な人の死を思い出し、パニックになったり、急に涙が出てくることがなくなることがゴールになります。身近な人の死への悲しみは”癒える”ものではないのです。
つまり、悲しみから完全に開放されることが目的ではなく、「故人とともにある」ことが最終的な目的となります。自身が強くなり、悲しみとともに歩んでいくと言い換えることもできるでしょう。
「時間が解決する」は違います
故人との別れを克服するために、「時間が解決する」という方は多くいらっしゃいますが、必ずしもそうとは限りません。むしろ、時間をおいていることによって思い出した時、パニックになり急に泣き崩れてしまうことがあります。
そのようなことが無いように、時間をおいて忘れたふりをするのではなく、むしろ故人との別れに積極的に向き合うことが大切です。向き合い方は次に解説する通りです。
故人のことを偲んで思い出す
向き合い、克服するための第1ステップは、故人をしっかりと思い出してあげることから始まります。
しっかりと思い出してあげるとは、例えば「故人との思い出の場所に行く」ことや、「写真を見る」ことです。自分の世界から故人を遠ざけるのではなく、むしろ同じ世界で生きているという実感を持つことが大切です。
積極的に思い出すことはものすごく辛いこととは承知していますが、その行動こそが克服するということなのです。
「故人の死」について意味を見出す
故人の死を乗り越える第2のステップとして、その死に意味を見出すことが大切です。死に意味を見出すということは抽象的で分かりづらいとは思いますが、具体的に言えば「故人は最後に何を言いたかったのかな」と考えることや、「今の自分の生き方を故人が見たらどう思うかな」と自らを振り返ってみることです。
このステップを踏むことで身近な方をなくし、悲しみの中に暮れている方はの心は強くなっていきます。そして、故人の死に意味を見出すために考え、自らの行動を振り返り、自分の人生の質を向上させることで、故人が生きていてくれた意味を見出しながら生きていくことができるようになります。
また、故人の死を「自分にとっての試練」であるととらえることもできます。先ほど申し上げた、「人生の質の向上」のための試練です。このようにいろいろな角度からその意味を見出すことがとても重要です。
自分の感情を紙に書きだす
ご自身の中に、身近な人を亡くしたことへの感情が募っていると思います。「悲しい」や「どうして助けられなかったのだろう」「その方がいない中、どのように生きていこう」などです。
その感情を紙に書き題してください。最低1日8分、1日20分間行うことが理想です。これはエクスプレッシブ・ライティングと言いますが、これをすることでストレスを大幅に解消し、メンタルが改善することが分かっています。(ミシガン州立大学研究論文より)
感情を隠さず表に出す
悲しみなどの感情を表に出さずしっかりした自分を演じようとされる方が多いです。しかし、むしろ感情をため込むのではなく吐き出すように、感情を表に出すことが非常に大切です。感情を抱えることでストレスも同時に抱えることになるからです。
エクスプレッシブ・ライティングによって感情を表に出すのと並行して、感情を表に出し表現することで感情も安定するようになっていきます。
これを実現するためには、身近な人に自分の抱えている感情や問題を聞いてもらうのが一番早いです。身近な人であればあなたを放っておく人はいないと信じ、勇気をもってその一歩を踏み出してみましょう。加えて、涙をこらえないということも意識してみてください。感情の表現をするという上では「泣く」ということも悪いものでは決してありません。
また、法事に行くと、もれなく同じく悲しんでいる方がいらっしゃいます。そのような方と話すということもまた、ストレスから身を守ることになります。感情を吐露する機会は非常に大切なのです。
このように、法事や法要にて喪に服すことは、同じ感情を持つ方と話す機会が設けられるため、悲しみを和らげる効果があることがわかります。
同じ境遇の人を見つけて感情を共有する
その状況を一人で抱えるのは本当に大変なことです。同じ境遇の人を見つけ、感情を共有することで「自分だけじゃない」という感覚を持つことができます。これをすることで、仲間を見つけることができたと感じることも多くなるでしょう。
その「仲間」の感覚も死別を乗り越える大切な要素となります。
心療内科で受診する
深い悲しみは突発的な行動を引き起こしてしまうことがあります。もし、衝動的に突発的な行動をしてしまいそうで心配だという方は、まず心療内科を受診してみることをお勧めします。心の傷は自然に治癒させることが一番ですが、そのせいで寝られず昼夜逆転してしまう等ということがあれば、実生活に大きな影響を及ぼします。
実生活が大きく狂い出してしまったら、より心の余裕がなくなってしまいかねません。「こんなので行っていいの?」という方もいらっしゃいますが、それで構いません。”まずは行ってみる”を心がけましょう。
自分のことを大切にする
最後に一番重要なことは、自分を大切にすることです。身近な人を亡くしてしまったら、自暴自棄になってしまう人がかなり多いです。
必ず自分のことを大切にするということは第1にすることを忘れないでください。身近な人の死について、自分のせいだと責めないようにすることが大切です。
まとめ
身近な人を無くした悲しみはすぐに消え去るものではありません。喪失感に襲われ苦しんでしまう時期、自戒の念に苦しんでしまう時期そして、徐々に故人の死を受け入れられるようになっていく時期と、段階を踏んで立ち直っていく方が多いです。
すぐに解決しようと無理をするのではなく、まずは第一歩を踏み出すということを意識してください。
この記事が、あなたの明るい未来へ歩むための第1歩目として力になれることを願っています。
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著者紹介

代表行政書士
中田 丞哉
Nakata Shoya
札幌市出身。日本大学法学部卒業。塾講師、大手行政書士事務所での勤務を経て事務所を開設。建設業許可申請、契約書作成、遺言・相続関係業務を幅広い人脈でサポートする。